New York Steinway Full Concert Piano(1920) story

サンプルイメージ

 1920年製、ヴィンテージ物のニューヨークスタンウェイです。 Steinway & Sonsのピアノはニ
ューヨーク製とハンブルグ製があり、それぞれが独自の個性を保っています。          
 イラストのピアノはソロコンサートでよく見るアングルです。このアングルが最もピアノをきれい
に見せると考えます。このアングルでは奏者の指先、足元、表情とピアノのゆったりとした大きなボ
ディ全体までが見渡すことができます。腕木の角が尖ったシャープで特徴的な形状は、端正なニュー
ヨークスタンウェイのフォルムを一層くっきりと美しく見せています。500kg近くもある巨大なボデ
ィが、すらりとした三本の脚によって空中に保持されているのも良く見えます。音楽のためだけに、
可能な限り収斂された楽器は、形の上にもその美しさを見ることができます。          
 コンサートホールで使われることの多いグランドピアノは、ステージに置かれた際に照明が客席に
反射しない様に、艶消しの塗装を施されるものが多くあります。艶消しは梨地塗装もしくは光沢の塗
装の表面にヘアーラインをかけます。イラストにしたピアノがヘアーラインです。        
 ニューヨークスタンウェイのグランドピアノは、本体外部を取り囲む側板が薄く、その側板自身が
鳴るという音響的に特殊な効果を生み出しています。その音色について、ニューヨークスタンウェイ
を好むユーザーは「倍音がとても豊かで華やかな音色」と賞賛します。また「弾き手の技量次第で、
無限の可能性を持つピアノ」といいます。                          
 ピアノの音色は、ピアノが持つ固有の性能だけで、出来るものではないようです。音色を引き出す
のは奏者のテクニックです。そのデリケートかつ高度な音楽的要求に答えてくれるのが優れたピアノ
ということでしょうか。                                  
 ビンテージのニューヨークスタンウェイが優れているのは、一つには材料になる木材が豊富な時代
であったことが上げられます。アメリカは世界最大の木材生産国であり、木材は至って豊富と思われ
ます。アメリカの建築現場を見て驚いたことがあります。普通、工事現場で使われる足場は日本では
金属のパイプ、香港では竹、というのが相場です。さてアメリカでは、驚くべきことに木製が多いの
です。それも白くきれいな新材が大量に使われているのを見て、木材が豊富な国ではこんなもったい
ないことをするのか、と思ったものです。                          
 そのアメリカですら、ピアノの材料になる木材が枯渇しつつあります。したがってヴィンテージ・
ニューヨークスタンウェイの時代のピアノは、もう生産できないかもしれないのです。それ以外の様
々な製造環境の悪化を考えると、二度と生産されることのないヴィンテージニューヨークスタンウェ
イは、極めて貴重な楽器といえるでしょう。                         
(資料協力:タカギクラヴィア株式会社)    全長 2700mm × 全幅 1550mm × 全高 1010mm




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